テニス関連メモ

テニスの王子様に関するまとめメモ

3rd比嘉公演で菊丸に殴られた話

20180411ログ





私が初めて生でみたのは2nd全国氷帝だったから、そこからぐるっと一周した。

元々氷帝ファンの私にとっては比嘉はそこまで思い入れはなく、印象の薄い学校で公演だった。そもそも比嘉公演を通して見たことがなかった。

1stのDVDを繰り返し見る中で比嘉キャストを見たり、2ndに通ってその中で見たりする程度の知識しかなかった。

私にとって比嘉戦は、あくまで比嘉の2回戦で青学と戦って負ける、もしくは青学の1回戦で比嘉と戦って勝つ物語だった。

佐伯もいたけど、正直佐伯の印象も薄い。比嘉戦の比重が、手塚の復帰戦としての印象が強いから、比嘉公演もそのイメージで、佐伯は異物のようにも感じていた。公演としてくっつけざるを得ないけど、彼が一人で戦う姿にそこまで入り込めなかった。

比嘉戦は六角の仇を取る青学の物語で、手塚の復帰戦っていう青学カラーの強い公演だと位置付けていた。

3rd比嘉公演もそういう眼鏡で見てた。結局私は氷帝ファンだし、次の全氷でサポートにくる子たちを見ておくかくらいのナメくさった姿勢で見に行っていた。


まず完成度が高かった。立海も初日から良かったけど比嘉も良かった。演目中に茶番が多くてそこで公演がブレるような気もしたけど、とりあえずは比嘉がチームとして出来上がっている事がわかった。

そしてここでやっと比嘉公演の複雑さに気付く。私の中に凝り固まっていた青学対比嘉というストレートな公演じゃなくて、六角の意識を入れて立海の出番を出さなきゃいけないとやっと気づいた。4校は多い。

そして4校とも脚本に絡む。D2には佐伯が必要だし、S1には立海のトップ3が必要だった。青学vs氷帝とストレートに銘打てる全氷の方がよっぽど楽に作れると気付いた。だって比嘉にどれだけ好きなことさせてもブレることが無い。でも比嘉公演で立海に好き勝手やり過ぎると締まらなくなっちゃう。難しい。やっぱりタイタニックは要らない。


そしてキャラクターを拡大し続けるテニミュの集大成を見た。不知火と新垣。

滝萩之介、内村京介、首藤聡とキャラクターの解釈を何人もしてきた集大成だったように感じた。だってもうこれ以上は出来なくないか?彼ら以上にかたちづくるべきキャラクターはもう居ないのではないか?錦織翼をするなら不知火と新垣の前にやっておくべきだったよ。キャラクター解釈も二人でラリーが出来ると度合いが違う。一人でキャラクター作ろうとすると、純度が落ちるから。やる人の自我が入る。解釈に対して、それはどうかなぁ、って言ってくれる人と出来るとこんなに上手に出来るんだねっていうのを教えてくれた。


初めて通して見た比嘉公演は比嘉の完成度の高さもあって、華やさと見応えでもって、私の色眼鏡を叩き割った。


比嘉がかっこいい。比嘉公演って比嘉の公演なんだなぁ。比嘉のチームとしての仕上がりに圧倒されてそれに終始していた。


私は青8も青9も初日に仕上がってなかったと感じてしまってから、そのままハマる事もなく、どちらかというと冷ややかに見てしまっていたので、卒業を控える比嘉公演でもそこまでの感慨も無く迎えて終わる予定でいた。なんなら当代リョーマの続投もあって、どちらかと言えば来たる10代目への期待値の方が高かった。


そんな私の腐った性根を今度は菊丸が叩き折った。


菊丸英二がやばい。

手塚でも木手でも佐伯でもリョーマでもない、菊丸がやばい。


凱旋公演で菊丸英二を初めて見つけた。人間としての菊丸英二だ、ゴールデンペアとしてでもない、キャラクターじゃない、等身大でそこにいる葛藤を抱えた菊丸英二を見つけた。見つけたというよりも見つけさせられた。菊丸英二を見ないで何を見るんだ、と言わんばかりに訴えかけられた。


S2が嫌いだった。もっと言うならバイキングホーンが好きじゃない。あれは演出がふざけ過ぎるから。前述の通り立海の茶番もここだ。そもそも審判コールがあるのにテニス用具以外が舞台上にあるのが嫌だ。曲終わりの審判コールの前に甲斐くんはマントと帽子を脱ぎ捨てられないのかと今でも思う。だからあまり気に留めてなかった。S2は、六角の因縁をある種、晴らしたD2と、比嘉の因習をさらに砕くS1の繋ぎの試合としか見ていなかった。ここでチームの勝敗が決まるのに。

ここで甲斐くんが負ける意味を知ったのが比嘉の東京公演だった。

ここで菊丸が勝つストーリーを見つけたのが凱旋公演だった。



菊丸英二はブチギレていた。

でもそれは六角に対する比嘉の行いに対してじゃなかった。

菊丸英二がブチギレていたのは相方に対してと自分に対してだ。

自分と一緒に掲げた目標を相方が反故にした。相談もなく、パートナーである自身よりチームが勝つ事を優先させられた。

自分をないがしろにした相方に見せつけるシングルスだ。そんな思い入れに他校の仇なんて入る隙は無い。

甲斐くんは的外れだった。菊丸の原動力は内々にあって、比嘉への闘争心なんぞほぼ無い。あっても義理だ、自分の中にある意地には勝てない。


テニミュを通して、屈指の試合数を誇る菊丸、その中でタブルスをしない菊丸英二は比嘉だけ。

シングルスの試合をして勝つ菊丸。

一言で表せばそれまでだけど。菊丸がダブルスを組めなくなって、しかもそれを手塚と大石の試合という形で知らされて、大石はもう納得してて、菊丸には説明もないのに、全国No.1ダブルスになるっていう夢は潰えたのに、誰からもフォローはなくて、手塚の復帰を喜べもしなくて、でも全国初戦でシングルスとして出ることになって、自分がしてきたことはシングルスで勝つためなんかじゃなかったのに、それでも見せつけるためには戦って勝つしかない。


自分に手塚ほどの力量があれば違う形で大石とのダブルスを継続させられたんじゃないか、青学レギュラー陣を納得させられたんじゃないかとか考えたんじゃないか、とすら思わせる。舞台上で吐き捨てるセリフと、力のこもった指先から、菊丸の思考した道が見えるようだった。

ディティールの細かさが比ではない。

菊丸英二を一つ上の段階へぶち上げた。

比嘉公演を菊丸英二の羽化公演に仕立て上げた。


ぞっとした。もう何周も何周も見てる。

原作も見てる。OVAも見てる。1st2nd3rdで比嘉公演だけでもう何回幕が開いたのか知らない。それなのに今まで知らなかった。六角と比嘉の因縁の裏で、比嘉と青学の勝負の裏で、菊丸英二がひとり、こんなに発奮していたと知らなかった。

私が知っていたのは知識としてだ、ゲームセットウォンバイの結果だけ知ってた。比嘉公演を解体した中に何があるのか知らなかった。ブチギレた菊丸英二が私を殴った。


最高の出来栄えだったと思う。

全国No.1を目指す菊丸英二の日常の延長に比嘉戦があった。それくらいの引力だった。この菊丸の動力には負けるかもしれない。

この菊丸がもう見れなくなるんだなと思ったときに、やっと卒業を感じた。次の菊丸へのバトンは尋常じゃない重さだ。だってこの菊丸は公演を一つ塗り替えた。ただでさえ4校出演の公演をもう一枚厚くした。

次の菊丸というのは10代目青学の菊丸だけじゃない。あると信じてやまない4th5thで比嘉公演を演じる、比較されるだろう菊丸へのプレッシャーだ。それくらい公演の見方を一新した当代菊丸の偉業は大きい。


当代菊丸への寂しさと次の菊丸への不安と、同時にこの菊丸を推した制作サイドへの期待が生まれた。3rdでは技術的な面での革新が目立っていたけど、この角度からでも公演を新しくしてくれるのかと。


私は氷帝のファンだから次の全氷が本当にわくわくした。新しいものが見れる気がした。

私の知らない氷帝を見せてくれると思った。もしくは青学の一面を見つけさせてくれると思った。期待した。

今までのテニミュ暦で一番生で回数見たのは間違いなく2nd全氷で、でも映像として見てるのは恐らく1st全氷だとか、思い入れがある公演だから。

恐らく全氷はそれぞれみんな人並み以上に思い入れがあって、ファンとして面倒臭い公演の自覚はあった。

1st当時も2nd当時もゴタゴタしてた。キャストが定まらなかったり、DVDが廃盤になったり、舞台の外での問題とかドラマ性とかが多すぎた。話が逸れるけど氷帝キャストと立海キャストを、関東と全国で揃える事を通例にしてしまった事実は大きい。

全国大会氷帝戦には本来不必要な事が周りに多すぎた。ミュージカルテニスの王子様を取り巻く物語と、舞台上の物語を重ねすぎると軸がブレる。


全氷に演目としての自立が欲しかった。

DVDの廃盤に伴って初代氷帝の神格化に拍車がかかった。

現行のレギュラージャージを着る氷帝が至高でないとだめだ。だってそうじゃなきゃ氷帝から遠ざかる。

誰がやっている跡部か、に執着するのは、私と跡部の間に誰かを介してる。跡部に近づきたいのに、跡部から遠ざかるようでは意味がない。


2nd全氷はほぼ改変が無かった。

曲も演出もほぼ変わらなかった。

これが全氷だと型押しされたように感じた。

1st持ち上げすぎたからか、1stの全氷が公式としてはもう見られない形になったからか分からないけど、見たいと言っていた全氷を貰った。

でもそうじゃなかった。

だって誰にも見えない糸でぼろ泣きした。

新しい事をしてほしい。新しい歌もほしい。

もう1stから続く全氷をぶち壊してほしい。

2nd跡部が1st跡部を心酔してたとか、D1にも曲をくれと直談判しに言ったとか、もうそういう欄外の事も無くしてほしい。

全氷一新の為なら、氷の世界も誰にも見えない糸も要らないと思う。

そういう事が出来る時期に、やっと氷帝がなったと思った。長かったと思った。

3rdの比嘉公演を作ったスタッフなら出来ると思った。当代の氷帝ならそれが出来ると思った。全く新しいものを見せてくれるともう、確信してた。


会える。

やっと新しい全国を戦う氷帝に会える。






矢先だった。









終わった。

もう終わった。最悪だった。

呪われてると心底思った。


現行のキャストじゃ無くても、どうしたって連想する。

2ndのDVDも廃盤になるんじゃないかと思ってる。廃盤にしてほしいとも思う。

彼の跡部を世の中に出したくない。

もう顔も、見たくない。


ただ廃盤になって2ndの二の舞になるのは嫌だった。

焼き直しの全氷なんてもう欲しくない。

DVDで過去公演が見られないからって、当時の、現行の、氷帝に背負わせるのはやめてほしい。

その時のキャストだから演じきる事ができる演目に仕上がっているんだから。

1st用の全氷をいつまでもやらせてちゃ駄目なんだよ。

それなのに。

新しいものが見れると思っていたのに。

キャストにもテニミュにも、それだけの力があるのに。


また舞台外が足かせになる。


全国氷帝をいつになったら真っさらな気持ちで見られるのだろう。

コートの中に集中したい。

全国大会氷帝戦の中にある物語を見つけたいのに。

付随される事情が多すぎる。


3rdの青学10代目でテニミュが終わるというのも現実味がある。


そうなった時、私は全国氷帝をどう受け止めたら良いんだろう。

2ndの全国氷帝をつくるとき、DVDの廃盤という問題が念頭になかったはずがない。

今回3rd氷帝をつくるとき、今回の事件が念頭にないはずがない。


菊丸英二の衝撃を跡部景吾で感じたい。

比嘉公演の衝撃を全国氷帝で味わいたかった。

悔しい。


どうか杞憂に終わって欲しい。